先日、ブライダルのとある企業様にお勤めの新卒2年目の方(以下、Aさん)へ、インタビューをさせていただきました。
Aさんはブライダル専門学校を卒業後、晴れてブライダル業界に仲間入りしました。
しかしながら、2年目の夏に退職の決意をしたとのこと。
憧れのブライダル業界に就職できたのに。会社やそこで働く人たちのことは大好きなのに。
なぜAさんは退職をすることになったのでしょうか。
今回、Aさんへインタビューをする中でこれからブライダル業界を目指す、すべての人に知ってほしい話がたくさん聞けました。
ブライダル業界に憧れがあるものの「企業選びって何に気をつければいいの?実際働いてみてどう?」と不安に思ったことあありませんか?
そんな方にはAさんの事例が、そしてこの記事が参考になるハズです。
・専門学校やインターン・コミュニティ参加など、後悔ゼロのやりきった学生時代
・理想の結婚式、理想のプランナー像を追求した結果、理想と現実のギャップに苦しんだ新卒1年目
・理想と現実のギャップを回避・軽減する方法について解説
まずはじめに、簡単にAさんの経歴をご紹介をします。
Aさんがウェディングプランナーを夢見るようになったのは中学・高校生時代のこと。
高校卒業後は、当然のように地元のブライダル専門学校に進学しました。
専門学生時代の2年では、フリーランスのウェディングプランナーさんの元でインターンを経験。
Aさん曰く、そのインターンは最も学びが多く充実していた期間だったそうで、ウェディングの現場経験を通じて結婚式の素晴らしさをより一層実感したそうです。
またインターン参加の他にも、結婚式にまつわる情報収集用のSNSアカウントを作成したり、オンライン・オフラインの業界コミュニティやイベントにも積極的に参加。
アクティブに動き成長の機会をつくり続けた学生時代に「一切の後悔はない」と言い切れるほど、充実感に溢れた期間を過ごしました。
これらの活動によって、Aさんは自分が思い描く理想の結婚式・ウェディングプランナー像を形作っていきました。
・理想の結婚式とは…
・ウェディングプランナーとは…
・ブライダル業界は…
しかし、そんなAさんは新卒2年目に退職を決意しました。
四六時中、結婚式のことを考えていられるほど大好きな仕事のハズなのに、なぜAさんは退職することになったのでしょうか。
Aさんが理想とする「結婚式やウェディングプランナーの在るべき姿」が明確だったが故に、新卒で入社した会社で経験した現場の実態に大きなギャップを感じてしまったのです。
そしてその理想と現実のギャップに耐えきれなくなり、Aさんは退職を考えるようになりました。
募っていった5つのモヤモヤ
会社としての事情は理解しつつも、オペレーショナルに結婚式が扱われている現実を目の当たりにしたAさんは「現場を見ていられなくなった」と言います。
Aさんはどんな理想を抱き、どんな現実にぶつかったのか?
苦悩の日々をとても詳しく、快く話してくれました。
理想
- 新郎新婦の想いを共有するMTG
- プランナーは新郎新婦に1番近くにいる
- 結婚式後に新郎新婦と喜びを共有できる
- 新郎新婦のバックボーンに深く踏み込むプロデュース
- プランナー同士で結婚式について語り合える
現実
- 進行内容の確認だけのMTG
- 新郎新婦には当日一度も会えない
- 退場扉の外には誰もおらず、待機
- 誰もご家族やおふたりについて踏み込まない
- そもそも事務所に誰もおらず、結婚式の感想を共有できる仲間がいない
新郎新婦の想いを共有するMTG
多くの結婚式場では、結婚式の約1時間前などに、当日の結婚式に関する最終のすり合わせMTGを行います。
このMTGはウェディングプランナーからキャプテンや司会者、サービススタッフ(配膳など)へ情報を共有する最後のチャンスです。
「今日の新郎新婦は、どんな結婚式にしたいと思っているのか」
新郎新婦の思いをプランナーが代弁し、チームの結束力を高める。
このMTGの場は、臨場感あふれる現場づくりを行うための大切な時間。
Aさんはそんなイメージを描いていました。
しかし実際に行われていたのは、進行内容をチェックするだけの表層的なMTGだったようです。
プランナーは新郎新婦の1番近くにいる
とはいえ、いざ結婚式が始まればプランナーが全体の指揮を執り、祝福の最前線にいるものだ…と想像していたAさん。
しかしここでも予想は裏切られます。
Aさんが所属していた会場では、挙式・披露宴会場の中にプランナーの姿はなかったのです。
「えっ?じゃあプランナーは何をしてるの?」と思いますよね。
結婚式の間、プランナーは別のお客様との打ち合わせをしているのです。
聞けば、こちらの会場では一人のプランナーが月間7〜8組の施行を担当するそう。
月間の担当組数は会社によって異なりますが、私のプランナー時代は月間3〜4組でした。そう、2倍です。
物理的に、結婚式に顔をだす暇がないのも理解できます。
「果たして、ここでウェディングプランナーをやって幸せになれるのか」と、Aさんは次第に思うようなっていきました。
結婚式後に新郎新婦と喜びを共有できる
結婚式の場にウェディングプランナーがいないことにも驚愕したAさんでしたが、結婚式後の新郎新婦の姿を見て「さらに悲しくなった」とのこと。
披露宴の最後、出席ゲストから祝福の拍手に包まれ、退場扉の向こうへと歩みを進めていく新郎新婦。
そしてその退場扉が閉まった時、新郎新婦は、無事に結婚式を終えられた安堵と達成感に包まれる。
一緒に結婚式を創った結婚式場のスタッフと新郎新婦とで喜びを共有する。。
このような空間がそこにはあると思っていました。
しかし実際には、新郎新婦はイスに腰掛け、ウーロン茶を飲みながらエンドロールムービーが終わるのを待つ。
この現実・実態に、「お客様のためにもっとできることがあるのでは…」という虚無感を覚えるようになりました。
新郎新婦のバックボーンに深く踏み込むプロデュース
Aさんの会社では1人のプランナーが月間7〜8組の結婚式を担当します。
プランナー経験者であれば直感的に分かると思いますが、この組数を対応するためには、ぶっちゃけ結婚式の内容をオペレーショナルにせざるを得ません。
新郎新婦のバックボーンに深く切り込み、そのヒアリング内容を結婚式の中に盛り込むプロデュースをプランナー自身がやりたいと思っても現実的に不可能でしょう。
なお、これはAさんの結婚式場だけの話ではありません。
別の結婚式場でプランナーをしていた私の友人も7〜10組担当していました(現在は退職済み)。
やはり、結婚式の内容は似通ったものになるし、いかに効率的に打ち合わせを進めるかを考えざるを得ないと言っていました。
詳細は後述しますが、Aさん同様に「プロデュース力を重視」する場合、どのような仕組みの企業・結婚式場に就職するか?は慎重にリサーチする必要があります。
プランナー同士で結婚式について語り合える
結婚式に顔をだす暇がないくらいいそがしくしている先輩ウェディングプランナーたち。
事務所に人がいることも少なく、いつもガランとしていたそうです。
「今日の結婚式でさ、新郎のお母様が…」
「あの企画、めちゃくちゃ盛り上がって凄くよかった!」
結婚式を中心としたこのような会話をしたかったAさん。
しかし、残念ながら結婚式を深める議論ができる仲間・環境はそこになかったとのこと。
「自分が憧れるようなプランナーに出会えなかった」
ブライダル業界への期待値が高かったが故に、Aさんの中でモヤモヤが膨れていきました。
Aさんはインタビュー中「もし私が無知な状態で入社していたら、スポンジのように吸収できたのかも…」とおっしゃっていました。
私は、一定この意見は正しいと思います。
例えば、私が新卒で入社した会社では一時期「ブライダル専門学生は採用しない」としていました。
(ブライダル業界を志して専門学校に入ったハズのに酷な話ですよね)
なぜなら「結婚式はこうあるべき」といった固定観念を持つ学生が傾向として多く、自由な発想が生まれにくくなったり、自社が目指す方向性と合わない可能性が高いからでした。
ブライダル専門学校・学生を一概に否定する訳ではありません。
しかし、スキルを感性を一から育みたいという思いからブライダル専門学校卒の学生を敬遠する企業も一定数いるということを知っておくといいでしょう。
そして意外にも、このような方針をとっていたブライダル企業は当時多くありました。
今はコロナ禍の影響もあり「企業の採用ニーズ > ブライダル業界希望の求職者」なので門戸は広がっている印象ですが、このような観点からAさんの意見は的を射ていると思いました。
じゃあ専門学校卒は活躍できないってこと?
せっかく専門学校に通ったのにダメってこと?
こんな声が聞こえてきそうです。
もちろん、専門卒がダメなわけではありません。
学生時代から、強いこだわりや高い志をもつことは大切です。
でも入社した会社が自分に合っていなければお互いに不幸になりますから、自分の思いの延長線上にいる企業をきちんと選ぶことが大切です。
Aさんの場合なら
・1組ごとの結婚式プロデュースに最大限の時間を割くことができる企業
・プランナーやキャプテン、シェフなど異なる立場のメンバーも同じ思いを共有できる企業
このようなイメージでしょうか。
今回は最後に、Aさんの場合の企業選びの方法について考察して締め括りたいと思います。
大まかに3つのステップに分けて解説します。
STEP1:「会社の学校化マインド」を捨てる
いきなり辛辣なことを言うかもしれないです。説教じみてるかもしれないです。
(読んでみて、気分を害すようなら読み飛ばしてもらって結構です)
まず1つ目のステップとして、自分の理想100%の会社なんてこの世に存在しねぇよってことを心に刻んでください。
私はこれを「会社の学校化マインド」を捨てると言っています。
具体的には以下のようなマインドを持つことが大切だと思ってます。
・会社は給与を、従業員は労働力をそれぞれ提供することで成り立っている
・つまりより良い環境づくりをすることも従業員の業務の一環である
・環境の悪さを嘆くのはお門違い
・イヤなら退職すればいいだけの話
・そもそもその会社へ入社する意思決定をしたのは自分
・見抜けなかった準備不足がすべての発端
・会社のせい、誰かのせいにする『他責思考』で成長する人はいない
・小さなチャンスを掴み続けなければ、大きなチャンスは巡ってこない
・社内でできないことは社外(お客様)にできない
・自分の理想を100%叶えたいなら起業した方がいい
これらを腹落ちさせて、実際のアクションが伴えば新卒3年目くらいまでは頑張れますし、確実に実力もつきます。
例外を1つだけ紹介すると、
万が一ブラック企業に就職してしまった場合は「自分の準備不足を真摯に反省」しつつ、すぐに転職しましょう。
くれぐれも同じ過ちを繰り返さないよう、転職に関する情報収集はしましょう。
STEP2:徹底的な「事実」を集める
2つ目のステップは自分の志向性に合った企業選びをするための情報収集についてです。
Aさんが以下のような会社を希望していたと仮定した場合、
・1組ごとの結婚式プロデュースに最大限の時間を割くことができる企業
・プランナーやキャプテン、シェフなど異なる立場のメンバーも同じ思いを共有できる企業
現実的に実現できる企業だと言えるまでリサーチをしなければなりません。
Aさんは1組ごとのプロデュースを深めたいという希望がありました。
であるならば月間の担当組数がいくらであるか?などはマストでリサーチする必要があるわけです。
例えば私は、以下のような仕組みの結婚式場に入社したおかげで1組ずつの夫婦に深く入り込むプロデュースを経験することができました。
ツイートの最後に「再現性はゼロ」と書いた通り、私の場合は”たまたま”なんですね。
なので今学生に戻るとしたら、どのような方針に従ってリサーチや意思決定をするか解説します。
1チャペル1バンケットの式場に絞る
1チャペル1バンケットとは「挙式会場が1つ、披露宴会場が1つ」の結婚式場のことです。
どれだけいい結婚式をつくりたいと思っても物理的に不可能なケースがあります。
それが「1チャペル複数バンケット」または「複数チャペル複数バンケット」の式場勤務のケースです。
バンケットが複数ある場合、プランナー1人当たりの担当組数が多く、効率化を求められます。
Aさんのように、プロデュース力を磨くことを最優先に考えるならば必ず1チャペル1バンケットの式場・会社に入社するようにしましょう。
Openworkで従業員口コミを徹底リサーチ
次に、就職・転職口コミサイトのOpenworkで志望企業をチェックするのはマストです。
実はAさんは「長時間労働で体を壊した」時期があったそうです。
当然、会社名は非公表としますが当該企業をOpenworkで調べてみると業界平均と比べ、長時間労働が常態化しているのでは?と言える結果になっていました(一部表現を曖昧にしています)。
業界平均
- 待遇面の満足度:2.6 / 5.0
- 法令遵守意識:3.7 / 5.0
- 残業時間:23.6時間
- 有給休暇消化率:57.2%
当該企業
- 待遇面の満足度:1.8 / 5.0
- 法令遵守意識:2.3 / 5.0
- 残業時間:40〜50時間
- 有給休暇消化率:35〜45%
もちろん、その他の項目では業界平均を大きく上回る項目もあります。
自分の優先順位と企業の実態とを比較することで、より自分に合った決断が可能になりますので従業員による口コミは必ずチェックするようにしましょう。
ウェディングパーク・みんなのウェディングで結婚式の口コミを徹底リサーチ
結婚式の満足度に、スタッフの関わりやプロデュース力が貢献している企業であれば、自然とスタッフに言及する口コミが多くなります。
「プランナーの〇〇さんがたくさん提案してくれた」
「プランナーさんと出会えてよかった」
「当日、プランナーさんの顔を見れて安心できた」などです。
ただし、ウェディングプランナーが結婚式当日にどの程度関与しているかは口コミサイトだけで読み取るには限界があります。
月間の担当組数を聞く
ウェディングプランナーの影響範囲を把握する最も確実な方法は、就活や転職の面接の場で直接聞くことです。
・月間担当組数の平均は何組か?
・挙式・披露宴中のプランナーの主業務は?
・1組の平均打ち合わせ回数は?
・打ち合わせは何ヶ月前からスタートするか?
この辺りの質問をすれば、自分のイメージとのギャップを把握することが出来るハズです。
月間担当組数が多ければ、1組にかける時間や工数は少なくなります。
挙式・披露宴中のプランナーの主業務が「受付の準備・後片付け」や「控え室の準備・後片付け」などであれば、プランナーは会場に顔出しをする程度でしょう。
打ち合わせスタートが結婚式の3-4ヶ月前で、1組の平均打ち合わせ回数が3-4回ほどならオペレーションに則ったプロデュースである可能性が高いです。
書類作成・面接の対策をする
上記のリサーチを行い、自分の志向性に近い企業が見つかったとしても実際に内定を獲得しなければ絵に描いた餅です。
最後は実際に内定獲得の対策をしましょう。
主に書類作成と面接の対策です。
こちらは追って記事化します。
さて、今回はブライダル企業を新卒2年目にご退職されるAさんへのインタビューをもとに記事を書きました。
Aさんは人間関係の面でも苦しい思いをしたとおっしゃっていました。
そちらは当記事の後編として改めて執筆します。